6,直物レート、先物レートという言葉をよく聞きますがどういう違いがあるのですか?
8,銀行の窓口に見る、為替レートでTTS,仲値、TTBとは、何のことですか?
![]()

1,外国為替市場は,どこにあるのですか?
「市場」というと、どこかに人がたくさん集まって、大声をあげながら取引している姿を 思い浮かべます。 外国為替市場は、株式市場などと違って一つの建物の中で取引が行われているわけではありません。取引を仲介するブローカーや電話、電子機器、インターネット などを使って、市場参加者をつないで、通貨の売買をしている市場です。
1985年の秋、プラザ合意により、一米ドルが240円から急速に円高になりました。余りに為替レートの変動が激しく、輸出業者の中には悲鳴を上げるところも出始めた頃、国会議員の中には「為替市場は輸出企業を苦しめており、けしからん。一度,視察に行こう。処で、外国為替市場はどこにある?」との声が上がったという、笑うに笑えぬ話があります。
株式市場のように具体的な建物の中に、市場がある訳ではありません。
皆さんが、テレビのニュースで見る外国為替市場は、銀行のディーリングルームであったり為替の売買を仲介するブローカーの取引現場であり、これらは市場の一部です。
![]()
![]()
![]()

2,どんな人たちが外国為替市場に参加しているのですか?
皆さんが、テレビのニュースで見る外国為替市場は、銀行のディーリングルームであったり為替の売買を仲介するブローカーの取引現場であり、これらは市場の一部です。
各国の中央銀行、世界中の金融機関、金融機関の間に入って、為替取引を仲介する仲介業者(ここまでを「狭義の市場参加者」といいます)に加え、輸出入業者、商社、証券会社、投資家などが、あらゆる通信手段を使って、通貨を売買します。
我国では、1998年4月の外国為替管理法の改正により、誰でも銀行を経ずに外国為替の取引が可能となりました。それまでは「為銀主義」と言って外国為替取引を行うには、公認外国為替銀行を経由しないと取引できませんでした。
![]()
![]()
![]()

3,取引されている主要通貨とはどのような通貨ですか?
1999年1月より、欧州統合通貨であるユーロの登場でドイツマルクやフランスフランは姿を消しましたが、これにより主要通貨はドル・円ユーロの三通貨になりました。この主要三通貨を軸に、多くの通貨が二十四時間取引されています。エレクトロニクスの発展で、東京の銀行でも、ロンドンやニューヨークの金融機関と取引が瞬時に成立したりします。
![]()
![]()
![]()

4,どのくらいのお金が取引されている市場なのですか?
外国為替市場は、世界で最大の市場です。世界の主要都市には、必ず外国為替市場があります。ロンドン、ニューヨーク、東京、シンガポール、香港、フランクフルト、チューリヒなどが主な為替市場です。
BIS(国際決済銀行)の三年に一度の外国為替の取引高調査(48カ国)よると、2001年4月には外国為替市場での取引高は、一日平均で1兆6190億ドル(約194兆円 )となっています。日本の国家予算を 八十兆円としますと、その二・四倍のお金が一日に動くとてつもなく大きな市場なのです。また、世界中で取引されているわけですから、ほとんど二十四時間 、常にどこかの市場が開いています。このような性格を持った市場ですので「眠らない市場」とも言われます。
このなかで東京市場は、世界の為替取引の9.1%にあたる、一日平均1,468億ドル(約17兆 6,000億円)の通貨の売買が行われ,ロンドンの5,040億ドル(30%)、ニューヨークの2,520億ドル(16%)に次ぐ世界第三位の重要な市場です。
しかし、外国為替の取引高は、三年前の1998年の一日平均の取引高1兆9,580億ドルに比べ17%あまり減少しています。これは、欧州統合通貨ユーロが導入されたこと、金融業界の再編成の波が世界的に押し寄せたこと、一部の地域にアジア通貨危機の影響が残っていたこと、世界的に経済活動が停滞していたこと、などの影響によるものと思われます。
![]()
![]()
![]()

5,外国為替取引とはどういう取引ですか?
外国為替取引とは、一口に言って、「異種通貨の交換」をする取引です。ここでは、特に断らない限り、外貨を米ドルとして、米ドルと円の取引について説明します。以後、ドルとは、米ドルのことと理解してください。
■輸出入による外貨の売り買い
日本の輸出業者は、物を販売した対価として、ドルを受け取ります。このドルを銀行に頼んで自国通貨である円に交換し、仕入れ代金の決済に充てたり、従業員の給与を払ったりします。ひと頃のように、余りに輸出が増えると、受け取ったドルを売って円に換える輸出企業が増えますので、外国為替市場では、ドル売り・円買いが活発になり、ドル安・円高の傾向となります。
逆に、輸入が増えると、輸入業者は国内で輸入品を販売し、円を入手します。この円を売って、ドルを入手し、外国の仕入れ先に、ドルを払わなければなりません。従って、輸入が増えると、ドルを買い、円を売る人が増えますので、ドル高・円安の要因となります。実際には、円高・円安には、さまざまな要因がありますが、単純に考えれば、外国為替市場では、このようなメカニズムが働いています。
■海外旅行などによる外貨需要
もっと身近な例でいえば、皆さんは、外国旅行をするのに、何がしかの外貨を持っていかれるでしょう。この場合も多く使われる通貨は、ドルです。あまりに多くの旅行者が、 銀行の窓口で、ドルを購入しますと、銀行はその顧客に売ったドルを市場で買い手当てしなければなりません。夏や年末年始の旅行シーズンには、旅行者のドル需要は相当な金額になります。
■外貨による投資、外国からの投資
株式や投資信託を購入する場合でも、外貨建ての外国株式や外貨建て投資信託を買う場合には、外国為替も同時に取引していることになるのです。ということは、外貨建ての資産を購入する場合には、株式や投資信託の値動きに加え、外国為替のリスクも同時に負うことになります。参考までに、外貨建ての投資信託では、為替リスクをヘッジ(為替レートの変動によるリスクをなくす)するかしないかは、投資家が選択できることになっています。外貨建て株式の価格で収益が上がったとしても、思わぬ円高で、最終的には思ったほどの利益が上がらなかったなどという場合もありますので、為替リスクには、常に留意してください。
又、現在一般に行われているドル建ての外貨預金は、顧客は銀行に円を売り、ドルを買って外貨預金に預けるわけです。ここでも、外国為替取引は行われています。あまりに多くの日本人が、外貨預金をしますと、ドル買いが起きているわけですから、輸入の場合と同じようにドル高・円安の要因になります。
このように、外国為替取引は、極めて身近な存在なのです。
![]()
![]()
![]()

6,直物レート、先物レートという言葉をよく聞きますがどういう違いがあるのですか?
■直物(じきもの)
直物とは、取引日から起算して二営業日後に資金を受け渡しする取引です。通貨の売買には、売った通貨を取引の相手方に渡し、買った通貨を受け取ります。この資金の受け渡し日が異なると、ドルと円の取引でも、適用されるレートは異なってきます。外国為替市場レートが、毎日テレビでも報道されますが、「本日のレートはxx円です」というのは、この二営業日後に資金の受け渡しが行われる、「直物取引」の取引レートを指しています。
■先物
3営業日以降に資金の受け渡しをする取引を先物取引と言います。先物取引は、市場で、 取引の相手方がいれば、どんな期間でも取引可能です。十年でも二十年でも、取引の相手がいれば、取引は可能です。
■当日物、翌日物
当日に資金を受け渡す「当日物」、翌日に資金を渡す契約である「翌日物」などがあります。
■銀行窓口の対顧客
銀行の窓口で行われる外貨預金や両替の取引は、二営業日後の資金デリバリーを基準とした直物レートに、二日分の金利差を、レートに計算し直して、対顧客取引レートとしています。
![]()
![]()
![]()

7,先物レートはどのように計算されるのですか?
■通貨の先物レートは、二国間の金利差によって決る。
現在の時点での金利差を考慮した先物を取引すると、このレートとなります、と言うのが先物レートです。2001年10月末の、市場レートは次のようになっていました。これは,1ヶ月後の先物レートは、ドルディスカウント23銭2厘でドルと円の金利差は2.21%という意味です。又、3ヵ月先物は、同じくドルディスカウント66銭4厘で、金利差は、2.08%という意味です。「d」というのは、ドルが先行きディスカウント(円に対して先安)という意味です。円から見れば、「円の先高」で、これをプレミアムと言います。この場合は、ドルディスカウント、円プレミアムとなっています。
![]()
| 銀行間直物終値 | 1ドル121.85円 | |
| 銀行間ドル直先スプレッド | ||
| 期間 | 新聞報道による 直物と先物の差(銭)実勢 |
金利差(年率) |
| 1ヶ月 | d0.232 | 2.21% |
| 3ヶ月 | d0.664 | 2.08% |
![]()
■金利差による直物と先物の差の計算。
それでは、実際に表の日米の金利差が、直物と先物の差に反映されているか、検証してみましょう。
直物は、121.85円ですから 年率2.21%の金利差(ドル金利が高い)があると、その金利差は1ヵ月間、3ヶ月間でいくらになるのか理論値を計算してみましょう。
1ヶ月
121.85 x 2.21% x 31日/360日=22.9銭と、新聞報道の23.2銭と近い値になっています。
3ヶ月
121.85 x 2.08% x 94日/360 =66.2銭 と新聞の値66.4銭と近くなります。
なお、1年の日数は、国内では365日を使いますが、欧米では、一部市場を除き、360日を使います。
■先物レートの計算。
22.9銭及び66.2銭というのは、直物レートから、それぞれ1ヶ月物及び3カ月物がいくらかい離しているかという直物と先物の開き(スプレッド)です。それでは1ヶ月先物及び3ヶ月先物が、それぞれいくらしているか という値を求めるには、直物レートから先物スプレッドを引けば求められます。
1ヶ月物
121.85 - 0.23 = 121円65銭
3ヶ月物
121.85 - 0.66 = 121円19銭
■先物レートの一度に求める計算。
先物の絶対値を一度に求めるには、次の算式を使います。
先物レート=直物レートx(1+円金利x期間)/(1+ドル金利x 期間)。
このようにして、為替の先物レートは二国間の金利差から 、その均衡点が決まってきます。右記の例で、3ヶ月のドル金利を3%、円金利を0.92%、金利差を2.08%とします。
3ヶ月ものドル円レート
121.85円 x (1+0.0092x94日/365日)/(1+0.003)x94/365日=121.20円となります。(先ほどの計算では121.19円でした。)
決して、市場が円に対するドルの将来見通しを、安くなると予想してドルが先安(ディスカウント)円のプレミアムとなっている訳ではない、ということにはくれぐれも留意してください。
■濡れ手に粟のチャンスは市場には存在しないことの説明
仮に、円金利がゼロ、ドル金利が2%であった場合に、直物と先物が121.85円フラット(同じレート)であったと仮定してください。いま、ドルの資産(外貨預金)を持った人は,預入と同時に、預けたドルと同額を先物レート121.85円で期日に合わせて売っておきます。外貨預金には、銀行は先物予約を受けないようですが、同じ操作は、プロには簡単にできます。この人は、何のリスクも負わずに、本来はゼロ金利である円資金を2%で運用できることになります。
市場では、このような、うまい話はできないようなメカニズムがはたらいたいるのです。
![]()
![]()
![]()

8,銀行の窓口に見る、為替レートでTTS,仲値、TTBとは、何のことですか?
■仲値の決め方
銀行の窓口に掲載している対顧客取り引きレートは、当日の東京為替市場で取り引きされている相場を、基準に決められます。ドルの場合につき説明しましょう。1993年まで、市場は、午前は9時に始まり、前場は12時に終わります。後場は、13時半より15時半の2時間、1日5時間の取り引き時間帯に限られていました。現在は、1日24時間、好きな時間帯に取引ができるようになっています。銀行が、定める仲値は、午前9時55分の市場での出会いレートを参考に、10時の仲値として、各行が決めています。ドル・円の場合でしたら、5銭刻みが、日本の銀行では習慣になってしまっていますが、今は5銭刻みにする必要はありません。長年の慣習から抜け切れないだけです。
外銀では、5銭刻みにとらわれず、自由に決めています。日本の銀行の場合、一部の銀行を除いて、東京三菱銀行の決める仲値にならっているのも、困りものです。独占禁止法にに抵触しないのでしょうか?
実は、この件で、公正取引委員会の方と、話したこともあるのですが、残念ながら、いまだに自由競争になっていません。話が、少し脱線しましたが、ともかく、午前10時にその日の仲値が決まります。
■TTSとTTB
その仲値に、1円上下させたレートが、それぞれドルのTTSとTTBです。
例えば、仲値が120円でしたら、TTSは121円、TTBは119円となります。
TTSは、Telegraphic Transfer Selling、TTBのBはBuyingの略で、昔は外国と取り引きするのに、コストの安い郵便を使ったりしていたのですが、特別急ぐ場合は、テレックスを使い、即日の処理をしていました。TTBは銀行が外貨を買うレート、TTSは売るレートです。
TTSやTTBというのは、当日窓口で行う、外貨取り引きに使われます。TTSは外貨預金の作成や海外送金に適用されます。海外旅行者の方が、トラベラーズ・チェック(TC)を購入するのにもTTSが使われますが、この場合には1%の手数料が掛かりますので、現金を2円高いレートで買うのと余り違いはありません。百ドルを換えて、百円以下、千ドル換えて千円以下の違いです。又、TTBは、外貨預金の引き出しや、海外からの送金を円に換える取り引き、などに使われます。ドルの現金を売買するときは、TTSとTTBから、さらに二円が加減され、この例では、それぞれ、123円と117円になります。余った、TCを円に換えるのには、銀行が顧客から受け取ったTCを、海外に送って現金化するまでの金利、(執筆現在では27銭)がTTBより引かれます。
■見直されるべき銀行の手数料体系
これらの手数料体系は、1949年4月に1ドルが360円のとき、50年以上もまえに、決められたものであり、銀行に都合の良いレート体系なので、現在まで見直しが行われず残っています。1ドルが、110円前後となった今日は、仲値とTT幅は、理論的には三分の一の33銭となリますが、50銭程度に、縮小されてしかるべきでしょう。現に、証券会社の扱っている外貨建てMMFは、確か50銭の手数料で、取り引きしてくれています。
外貨預金を預ける際にも、銀行の手数料を、50銭程度にしてくれるよう、交渉をすることです。給与振りこみや種々の自動引きとしサービスを利用していれば、銀行は応じてくれるはずです。数ある銀行の中から、取り引きをしてくれていると言うことは、銀行にとっては大変にありがたいことなのです。1円の手数料を50銭にまけるくらい、どうと言うことはありません。
銀行の窓口に見る外国為替の取引レートにも、改革が必要です。50年以上続いた対顧客取引レート体系の見直し、ドルの仲値を東京三菱銀行にそろえる横並び意識からの脱却、仲値制度そのものの見直しなどの改革が求められています。 午前中に仲値を決め、そのレートを基準として、市場レートが変動しているにもかかわらず、一日中、同じレートで窓口業務を行うというのは、先進市場では日本だけです。
![]()
![]()
![]()

9,個人は外国為替市場で資産運用を目的とした取引が可能ですか?
■個人に解放された外国為替取引
可能です。個人の投資家は、最近、外国為替市場を資産運用の場として活用するようになりました。
1998年4月の外国為替管理法の改正によりだれでも外国為替の取り扱いができるようになりました。それまでは、為替取引は、「外国為替公認銀行」、を通して行わなければならないよう、大蔵省(現財務省)により規制されていたわけです。この管理法の改正にいち早く目をつけ、個人投資家との為替取引に参入したのが、これまで、金やプラチナといった非鉄金属やトウモロコシや大豆といった農産物を取引していた商品先物取引業者です。一部の証券会社も、参入しました。
この分野では、銀行は出遅れたか、個人顧客との取引は、外貨預金に集中させる方針で、個人顧客との為替取引には、消極的な対応方針を採りました。実際のところ、不良債権処理を優先せざるをえないこと、システムの構築にも投資が必要で、余裕がなかったこと、ビッグバンの進捗が早すぎて、すばやい対応が取れなかったことなどがその理由でしょう。米国では、通常に行われている取引で、ヘッジファンドなども、主な 利用者です。
■外国為替証拠金取引
この取引は、一般の商品取引の手法を外国為替に応用したものであり、証拠金(マージンマネー)を置いたうえで、通貨の売買を行うという方法です。この取引はについては外国為替証拠金取引の手引きで詳しく解説します。
![]()
![]()
![]()

10,外国為替市場は、値動きの大きな市場と言われているようですが、主にどのような要因で動くのですか?
外国為替市場で、通貨の動向に影響を与える要因は、数多く存在します。英国のポンドの安くなっている要因に、オールイングランドのサッカーチームが、国際試合に負けたからとか、冗談半分に言われたりします。天気だって、人々は、冗談も交えて、通貨動向を説明する要因にしてしまいかねません。プロのディーラーは、一日中相場を示すスクリーンとにらめっこをしながら大きなお金を動かしていますので、時には冗談を言ったりして、気分転換を図る必要があるのです。どの要因に重点を置くか、ということについては、人それぞれで異なってくるでしょうが、私どもが仲間うちで話し合う大きな要因は次の通りです。
■米国の政治・通貨政策。
1971年8月のニクソンショックの結果、円は360円から308円まで切り上げられました。1978年10月のカーターショックでも、 ドルが180円を割りこんだときにドル防衛策が発表され、1ヶ月後には197円までドルは一気に値を戻しました。
1979年4月には、220円近くまでドルが上昇し、約20%の下げ幅となリました。
1979年10月に連邦準備制度理事会議長に就任したボルカー議長の政策により、ドル金利の上昇が、ドルを為替市場でサポートする形とな利ました。
1985年のプラザ合意は、ニューヨークのプラザホテルで主要五カ国が、高すぎるドルの是正を合意した通貨調整でしたが、これも米国主導で行われたものです。円は、240円台から1987年の2月には半分の120円にまで上昇しました。
このように、短期間の間に相場が大きく変動するのは、歴史的には、米国主導による通貨政策が大きな影響を与えています。
■資本流出入
金利為替市場の取引の中で、輸出入といった、いわゆる実需の取引が占める比率は、数%と実はあまり多くありません。市場取引で圧倒的なシェアを持つのは、国際資本取引です。国際資本は金利差を求めて市場を駆け巡ります。時には、円のような低金利通貨を借り入れ、売却してドルを買います。買い入れたドルを、例えば米国国債のようなドル資産で運用を行うような取引を組んだりします。
このような取引は金額が大きく、市場で行われると、市場レートを一方的に動かします。
この場合は、円が売られ、ドルが買われるので円安・ドル高になります。
2000年1月に、円はもう少しで100円を切りそうな円高になりかけました。実際には、101円台で終わりましたが、このときも下がったドルの買い手として、主にアメリカのヘッジファンドから大きなドル買い・円売りが起きました。売る円は、借入金です。円を借りて、ドル対価で売り、買い入れたドルを、金利の高いドル資産に運用する取引が大量に起きました。その結果は円安でした。その年は余り大きな値動きを示しませんでしたが、111円台まで円安に動きました。
このような取引は引き続き2001年になっても続きました。 1992年秋に、巨大な資金を動かしていたジョージ・ソロスは、英国の通貨政策に無理があることを察し、大量の資金を使ってポンドを売り浴びせ、ついに英国中央銀行は、欧州通貨制度(EMS)を離脱せざるを得ませんでした。
■インフレーション、金利と為替レート
しかし、余りに金利が高いと、インフレが進んでいたり、通貨が弱いので、通貨防衛の為にやむを得ず高金利にせざるを得ない状況もありますので、必ずしも高金利通貨が、為替市場で高いというわけではありません。
1980年には二桁の金利水準であったオーストラリアやニュージーランドへの投資が、日本の生命保険会社から大量に出ましたが、これらの通貨は国内経済の不調から下落してしまい、結果はうまくいかなかったようです。
1970年代の英国ポンドも、通過防衛上、金利を高めに設定していましたが、経済の不調でポンドは大きく売り込まれました。右記、ボルカーショックの時のドル高は、一時は20%を越える、ドルの貸し出し金利(プライムレート)に支えられました。通貨の先行きを見る上で、金利水準は依然として、大切な要因です。
■中央銀行の市場介入。
中央銀行は為替相場が行きすぎたときに、相場の過熱感を静めることを目的に市場の動きと反対の取り引きを出してくることがあります。
1995年の4月に、円が対ドルで、80円を割って、一瞬ですが79円75銭と、1973年4月に変動相場制が導入されて以来の最高値をつけました。この前後、日銀は相場の急激な変動を押さえるべく、頻繁に市場に介入していましたが、市場の勢いに押され、ドルの下落を止めることはできませんでした。
正常な経済活動に支障の出るような、急激な為替相場の変動を押さえる介入を、人々はスムージングオペレーションと言います。
1995年頃の日銀のドル買い介入がスムージングオペレーションであったかどうか、現場にいた私にもわかりません。結果として、スムージングオペレーションとなったということです。当局は、常に本気で市場に介入します。ドルの下落が著しい時には、何とかして、これ以上の下落を阻止しようとします。市場全体を相手に戦うわけですから、多勢に無勢、当局の意図通りに市場をコントロールできるわけではありません。
一方、1985年9月のプラザ合意時などのようなドル高の是正、或いは、1978年のカーター大統領による、ドル安の是正といった通貨体制の見なおしがなされた場合、中央銀行は協調して登場し通貨を望ましい方向に、力ずくでも誘導する場合があります。
1995年4月に付けた79円75銭の後、「強いドルは米国の利益」をスローガンに、日米の通貨当局が共同してドル買いの介入を繰り返し、1998年に、ドルは一時147円台まで戻しました。このときは、日銀はドル売りの介入を米国と協調して行いました。複数の中央銀行が強調した介入は、相場を大きく動かす恐れがあります。市場関係者は、常に中央銀行の動きを注視し介入の可能性について、見守っています。
■戦争・国際紛争・テロ
国際的な資金移動を引き受ける為替市場において、国際政治の動きは見逃せないに要因です。
市場では、「有事のドル買い」という言葉があり、戦争や国際紛争が起きると、持っている通貨をとりあえず避難通貨としてドルに取り替えておこう、とする動きが見られました。しかし、1990年の湾岸戦争のころから、「有事のドル買い」ということについて、必ずしも国際紛争がドル買いに直結するとは、限らなくなりました。特に、米国が国際紛争の当事者国として巻き込まれている場合に、ドルを「避難通貨」としてみるべきかどうか、見直しの機運が持ち上がりました。相変わらず中東情勢には目が離せない状況が続いており、原油価格の高騰、ガソリン価格の上昇が米国経済にも大きな影響を与えかねないことから、「有事のドル買い」よりも、金を買いたいという動きが出てきて金相場は上昇する傾向にあります。米国が巻き込まれていない紛争であればともかく、米国が紛争の当事者国であった場合に、ドル買いに走ることは危険です。
2001年9月11日に、米国で起きた同時多発テロの場合においても、米国本土が攻撃されたということはかつてなかったことではありますが、ドルは売られ、買われたのは、中立国の通貨であるスイスフランでした。金価格も上昇しました。
■景気動向と株価。
景気の良い国へ資金は流入しやすく、好景気国の資本市場に世界の資金が集まる傾向があります。しかし反面では、景気の良い国は輸入量も増大するので、貿易収支は悪化しやすくこの面ではその国の通貨が強くなるには、限界もあります。また、国境を越えた資本取引が自由化されるにつれて、株価動向も見逃せなくなりました。特に機関投資家による投資対象として好調な株価を維持している国へ資金は流れやすい傾向はあります。
■要人発言
市場には、一時的なインパクトではありますが、相場に影響を与える要因として、通貨当局者(日本であれば、財務省高官や日銀筋)が、通貨政策や金融政策について、思わぬ発言をしてしまう場合があります。。時には意図的に発言する場合もあるのかも知れません。
1987年2月のルーブル合意により主要七カ国(G7。日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリー、カナダ)の通貨当局者は、現行の為替相場には、言及しないとの申し合わせがありましたが、時間の経過とともに、この合意は、特に日本において守られていないようです。
私見ですが、日本では、通信社に働く日本人記者の規律が求められなければならないと思います。つまり、記者会見後の通路でいきなり取材を行い、一言応じた発言内容を針小棒大に伝えたり、その要人発言を慌てて記事にしようと、特ダネぶって誤った英語で流してしまったり、自社の記事はこれだけ市場に与える影響が大きいので、購読しなさいと「取材」と「営業」を取り違えた行動をとる記者諸君が、東京市場に多いこともあります。
要人の発言内容を正確に市場に伝えることはマスコミの大切な役割ですが、市場を混乱させるような記事を書くことが散見されます。厳に慎むべきと思います。いずれにしても、市場はその発言(記事)をきっかけに、変動してしまいます。
■持ち高の偏り。
持ち高とは、ドル・円の取引であれば、ドルの上昇を見込みドルを買っている(ドルの買い持ち)、あるいは、ドルの下落を予想しドルを売っている(ドルの売り持ち)という、外貨ポジションを言います。「どうもドルが上がりそうだ」と思う市場参加者が増えると、ドルは買われ、市場全体の持ち高が「ドルの買い持ち」に偏ります。
次の段階では、ドルを買っている市場参加者は、ある程度ドルが上昇してくると利食いのドル売りが市場の大勢を占めることになり、ドルは思ったほど上昇しなくなります。
ドルが売られ始めると、先程ドルを買っていた市場参加者が、われ先にとドル売りを出してくるので、ついには大半のディーラーがドルを買ったレベルを抜けて、今度は損失の出る領域に対してしまいます。最後は、それぞれの銀行内の規制により「もうこれ以上の損を出してはならない」というレベルにまでドルが下落してしまうと、損失覚悟のドル売り(ストップロス)が出て、ドルは下げ足を早めます。おおかたのストップロスが出尽くしたところで、市場は沈静化します。「市場参加者の多くの見方が、一方向に傾いた場合には、その方向にはいかない。」というのには、このような、理由があるのです。
市場全体がドルの売り持ちに偏った場合には、次ぎの段階でドルを買いたい市場参加者が増えますので、ドルはなかなか下げにくいということが言えます。 株式の信用取引においても、ある銘柄につき、信用で買っている人が増えると、次の段階では、利食いの売りが入りますので、信用の買い残高がかさんでくると、その銘柄はなかなか上がりにくくなる、という傾向と同じです。
■チャート(相場推移のグラフ)。
多くの専門家が同じチャートを見ながら、将来の通貨動向の予測にあたっています。
ドルと円の為替取引においても、すべての市場参加者が、同一のチャートを見ています。チャートには、このレベルを抜けると、ドルはどちらかの方向に加速するが、なかなかそのレベルは抜けそうもないというポイントがあるようです。
前の例で、市場全体がドルの買い持ちに偏っていた場合、多くの市場参加者がストップロスをかけるのは、このレベルはドルがそれ以下には行きにくいという水準(サポート・ポイント)近辺です。サポートのレベルを下に抜けてしまうと、ストップロスを発動しなければならない市場参加者が、われ先にとドルを売りに来ますので、ドルの下げ足に拍車がかかってしまうのです。
また、ドルが上昇するときには、この辺でドルの上昇が止まるのではないかというチャート上から見たポイント(レジスタンスポイント)があり、そのレジスタンスレベルを上に抜けるとドルの上昇に拍車がかかりやすいことになります。
市場には、どんな局面でも、市場参加者にはドルを売り持ちにしている者と、ドルの買い持ちにしている人たちがいます。同じチャートを見ても、見方に相違があるのでしょうか?何もチャートだけを頼りに、相場を張るわけではありませんので、「売り持ち組み」と「買い持ち組」に分かれます。
もう一組います「何もしていない、サボタージュ組」です。サボタージュ組はともかく、相場にチャートはつきものです。チャートに100%頼ることは危険ですが、ある程度チャートを見ておく必要はあります。
■米国の経済指標。
やはり経済は米国を中心に回っています。為替市場も、ドル対価の取引が圧倒的に多く、米国の経済動向には、特別の注意を払う必要があります。
その中でも特に注目しなければならないのは、雇用統計と経済成長率(GDP)です。数字の発表は、アメリカ時間ですから日本では夜の九時半(米国が夏時間の時)で、冬の寒い時期は十時半です。このときは、日本の金融機関でも、アメリカからの発表を待って市場動向を見守り、取引に参加します。
デイーラーになって良かったか、どうかはわかりません。私はディーラーとして働ける喜び、市場の仲間と市場動向を意見交換できる喜びを感じていました。ただし、できれば終電までには、終わりたかったのですが、なかなか帰れない日もありました。
この日は、日本でも、金融機関、商社、大手メーカーの財務担当者も、保険会社の為替担当者も、多くの市場参加者が職場に残り、米国の経済動向を見守ります。世界中が注目しており、数字によっては市場は大荒れします。ヨーロッパは午後の取引時間中です。雇用統計の場合は、失業率より「非農業者雇用」の増減です。これにより、米国の経済が活性化されているのか、沈滞化しているのかを見極めようとの判断です。皆、遅くまで頑張ります。戦いすんで夜もふけて、遅くまで残業して良かった人(儲かった人)、残業がくたびれ損になった人、人生いろいろありますが、残業が無駄になっても、次回に頑張れば良いのです。
まだまだ、市場を動かす多くの要因があります。中でも、日本の金融システムと不良債権問題は、世界経済の安定化にも極めて重要な要因です。欧州統合通貨ユーロの動向にも、目を離せません。
![]()
![]()

香川彰男の為替講座 | 外国為替の基礎 | 外国為替取引の税金
![]()




